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【ファン限定公開にしました】 この身に数珠玉のように降りかかった面白き出来事を忘れてしまうのはもったいない。だから記録しておこう。脚色を加えて。


by gyaxin
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先日、自分より年の若い人たちと話していて(こういうことを書く年齢になってしまった)、
相手にインタビューする時の心構えや技について尋ねられた。
インタビューというとぎょうぎょうしいのだけれど、要は知りたいことを聞いたり、
自分が知り得なかったことを語ってもらうための場づくりというのだろうか。

話し上手な人は勝手に語ってくれるからいい。
とはいえ、合間をみて軌道修正をしなければならないのだけれど。
話し下手、話に慣れていない人に語ってもらうのはどうするのか。

『評伝 宮田輝』

NHKアナウンサー宮田輝。
親しみやすい語りで戦後の復興にある日本国中の人々を元気づけたという。
私が生まれた頃にはアナウンサーを辞めていたようなので、意識して彼の語りを聴いたことはない。
宮田さんはのど自慢番組等で全国をまわり、市井の人々の声を聴いてきた。
人々の様子をよく観察し、彼ら・彼女たちが心地よく語れるように、言葉をかける。
いい頃合いで言葉を一歩踏みとどまる。
本書にはそんなエピソードが随所にちりばめられている。
北風と太陽よろしくふと胸襟を開きたくなるような雰囲気を醸し出す。

ちなみにまだ何者でもなかった北島三郎や大臣になりたての田中角栄とのやり取りも、
人情や気骨が垣間見れて面白い。
こころかよわせ-『評伝 宮田輝』-_b0037777_19024703.jpg

# by gyaxin | 2022-05-28 19:02 | artistic review
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# by gyaxin | 2021-08-15 23:44 | sports
松永久秀は不思議な人である。
主殺し、将軍暗殺、東大寺大仏殿に火を放つといった
数々の悪逆非道の嫌疑がある一方で、茶道や書に通じた風流人であり、
築城技術にも長け、仏教やキリスト教といった宗教にも造詣が深い。
各地の武将や商人たちとも深い交流があり、民にも慕われた。
ただ単に悪人という枠に押し込めるのは憚られる。
そんな男の理想とそれを追い求めた日々を
今村翔吾が描いたのが『じんかん』だ。

物語は久秀が信長に対して二度目の謀反を起こしたところから始まる。
久秀の謀反の報に、信長は意外にもそれを平然と受け止める。
久秀から信長に送られた謎のメッセージ。
その意図を知る信長は小姓の狩野又九郎と久秀の過去を振り返る。
久秀こと九兵衛は両親を亡くした孤児という設定。
弟の甚助とともに縁あって野党働きをする多聞丸一味となる。
500頁を超える長さであるものの、九兵衛の理想の行く先が気になってものの数日で読了。
久秀の悪逆と最期を知るだけに、九兵衛青年がなぜそれらを起こすに至ったのか。
ひきつけられて止まないのであった。
この本の魅力はそんな謎解きにとどまらない。
九兵衛の人生を通じて、人間の性を振り返れるからである。


以下、ネタバレ的記述。
# by gyaxin | 2020-11-22 18:09 | artistic review
定説では国を閉ざしていた日本を開いたのは井伊直弼であり、
それに伴って少なくない”志士”の血が流れ、明治維新に向けた
流れが加速していくことになった、と言われている。
その定説に疑問を呈する研究成果が示された。
幕閣にあって国を富ますために開国の意義を唱えていたのは、
上田藩主・松平忠固であったという。
彼は急進的な攘夷主義者であった徳川斉昭と論争をし、
開国の意義を唱えそれを推進する。
松平忠固は上田藩の蚕産業を推進し、明治初期にあっては上田が蚕種の輸出で全国シェアの4割に
まで達していた。これは武士の力よりも庶民の品質改良の努力の賜物であり、バイオテクノロジーの勃興であった。
「江戸時代から日本の庶民の力で蓄積され、国際的に高く評価された日本の蚕業・絹産業の技術力こそ、
独立を維持し得た原動力」(p.200)と著者は評す。
ちなみに忠固の四男・忠厚は米国で新しい測量器具を発明し、土木工学の発展にも大きく貢献することになった。
彼は英語で多数の論文を発表し、国際的な学術・発明の先端分野で活躍する初の日本人となったのである(p.65)。

話を通商政策に戻す。
歴史では日米修好通商条約は日本にとって不利な条約であり、
明治政府はそれに悩まされ続けた、というのが定説である。
その際、アメリカの全権大使・ハリスの威圧的な外交は有名である。
ただハリスはむしろアメリカの歴史的教訓から、日本に有利な
関税率を提案するとともに、金の流出を抑えるための提案をしていたいう。
アメリカ政府は「歳入を関税に頼って国家財政をまかなっていること、
日本も貿易に対して課税をすれば大きな収益をもたらし、立派な海軍を維持できるようになること」(P161)
というアドバイスをしていた。
これにほぞをかんだのがイギリス政府だった。
イギリスはアジアの植民地化を推し進めるとともに、その派遣を東へと伸ばしていた。
「イギリスがアジア諸国の関税自主権を奪っていった最大の意図は、アジア諸国が自立し、
イギリスを脅かす工業国になるのを阻止し、自国の工業製品の優位な状態を永続させようとした」(P159)
それを防いだのがアメリカであった。
結局、この関税率は長州が仕掛けた下関戦争の賠償によって、反故にされてしまう。
「関税率の削減は、工業化の進展も遅らせた。仮に下関戦争がなく、20%の関税率を維持できていたら、
国内産業を保護しながら殖産興業の財源を確保できていたはずであり、日本はもっと速やかに工業化・
近代化を達成していただろう」(p.238)というのが著者の見立てである。

「排外主義者のテロリズムが、その国の発展に貢献した事例など、いまだかつてないし、あってはならない。」(P.239)
「愛国心を煽る者たちほど、実際には民衆を愚民視しており、人々の知性や民度の高さを信用していない。」(p.243)
この辺りは近年の日本の流れを見るにつけ、留意しておきたいことである。

評価は変わる-『日本を開国させた男、松平忠固』_b0037777_18145588.jpg



# by gyaxin | 2020-11-20 18:15 | history

とびだせ

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# by gyaxin | 2020-08-14 23:32 | friends&family